IYAGI
INTERVIEW
先輩移住者インタビュー
掲載日:2021年9月28日
更新日:2023年2月21日
栗原市
『小さい頃からの教え』を胸に栗原の地へ/菊田明日香さん
- 農林水産業
菊田明日香さん
栗原市の中心、築館にある栗原市役所を出て北上し、国道をほどなく進み左折すると周りの景色が気になり始めます。黄金色に色づいた広大な田園、その先に見える栗駒山麓と青空に目を奪われながらさらに進んでいくと、気仙沼市出身の菊田さんが勤務される栗駒高原森林組合に到着します。
宮城県内で最も広大な面積を誇る栗原市は、四季の移ろいごとにとても綺麗な大自然の素顔を見せてくれる高原都市です。
ここ栗原で豊富な自然と向き合いながら暮らし、森林の保全を担うお仕事をする菊田明日香さんに、そのきっかけや暮らしぶりなどをお聞きしました。
自然と生き物が大好き
自身を育んだ大島の海と自然、生き物が大好きな菊田さんは、いずれは地元に帰ってくるつもりで北海道にある動物の専門学校に進みます。そこでまずは生き物の飼育や生態について2年間学びます。
その後も学びたい気持ちと探求心は衰えることなく、動物の飼育のお仕事を目指し岩手県のサファリパークで実習生となり、野生に近い動物たちと寝食を共にすることとなります。
「うちにこないかと誘われたのでそのままお世話になりました」
とご本人は軽く言いますが、それは熱心な仕事ぶりを買われてのスカウティング。
地元に近いこともあり3年ほど勤務することになります。
「野生動物に興味があって、そこでの私の担当は草食動物の二ホンジカなどでした。寮に住み込みで夜間も人口授乳でのお世話などをしていました」と楽しそうに語る菊田さん。大好きな動物のこととあって満面の笑顔で話してくれました。
「サファリパークでの主役はやはりキリンとかライオンたちになってしまいます。でも私はマイナーな動物を担当していたので、それを引き立ててお客様に見てもらうために、餌の撒き方を考えたり、いろいろな工夫をすることが楽しかったです」
と、動物とのふれあいと飼育のやりがいについて語ってくれました。
生き物を「育てる」ノウハウを自然に活かし森林の保全へ。栗原市との出会い。
もともとは動物だけではなく自然にも強い興味を抱いていた菊田さん。
動物の飼育のお仕事でそのノウハウを身に付けながらも自然やその保全への想いを抱き続けます。そして大好きな自然にかかわる機会が訪れたのは2020年の冬。
栗駒高原森林組合の募集を見つけ採用が決まり栗原市への移住を決意。
「栗原が林業が盛んだったことや、自然も好きだったこともあり転職しました。1月から勤務して、だいたい1年ぐらいたちました。」
その菊田さんの今の役割は木を植えて育てるお仕事。
「林業というと木を伐採して売るというイメージが強いですよね、私はその前の段階、伐採前の20年から30年ぐらいまでの間、木を大切に育てるのが役割なんです」
植えた苗木が何事も無く育つように下刈りなどの管理をするのが菊田さんのミッション、常に木の育成状況を観察するだけではなく、その土地の状態も把握が必要と教えてくれました。
木は土壌によって育ち方が違い、遠目で森林を見ると同じ杉や檜の集合に見えますが実は1本として同じ育ち方をする木はないのだそうです。
土壌の質はもちろん、太陽の光のあたり方によっては残念ながら上手く育たない木もあるそうです。
「1本の木を太くまっすぐに育てるためにはどうしたら良いか。日々山を歩きながら勉強しています」
と森林を見上げなら語る菊田さんの横顔は、とても凛々しく見えます。
活かされる生き物の知識
日々歩きながら木々や土壌を観察する山林。そこは野生動物の生活空間でもあります。ニホンカモシカやイノシシとの遭遇は特別なことではないそうで、ときにはツキノワグマを見ることも。
「サファリパークで働いていたこともあって動物の痕跡をよく見つけますね」
山のお仕事は野生動物との共存が前提となり、「痕跡」を見つけてあげるのは野生動物に対しての大切な気遣い。
前職で学んだ動物の生態や飼育の知識は、山のお仕事にも的確に活かされている様です。
実際に苗木から育てている森林で、木の太さの計測や枝切りの作業についてお話ししてくれた菊田さん。
腰のベルトにはどっしりと重いナタを携えクマ鈴を奏でながら歩くその姿は、スタイリッシュでどこか新しい何かを感じます。その立ち姿は画になるほどかっこよかったです。
地元とつながっている仕事に就けたことが何よりうれしい
菊田さんが生まれ育った気仙沼大島は、古くから遠洋漁業の拠点として有名な気仙沼湾の中にあります。
波静かな入り江では、牡蠣、ワカメや帆立などの養殖も盛んに行われています。
その中でも牡蠣は、川が森から運んでくる養分がそのうま味や品質に大きく影響をもたらすことは有名です。とくに気仙沼・南三陸地域は良質なブランド牡蠣の特産地となっています。
「地元には「森は海の恋人運動」というのがあって、南三陸の方では漁師さんや地元の小学生が木を植えるんです」
「海には山の栄養が大切」という考えかたを小さいころがずっと教わってきたと菊田さんは語ります。そして林業のお仕事に就いた一番の理由がここにあるのだそうです。
さらに続けます。「今は海が見えないですけど、山を育てることで地元の海にゆくゆくは帰っていくと信じています」
小さい頃からの教えを胸に秘めてきた菊田さんは、ここ栗原の地でその教えをお仕事として実行。離れた森から地元の海を育む仕事に就けることが何より嬉しいと言います。
あたたかい迎え入れ、心遣いが嬉しくて
そんな菊田さんは、栗原に住んでまだ1年。日々、栗原の自然や人に魅了されていると言います。毎日の通勤のお楽しみは車窓から眺める大自然。
栗駒山の木々や広大な田園の色の移ろいを、ときには稲や木々の成長を観ながらの通勤が日課になっているそうです。たしかにその素晴らしい風景には頷けるものがあります、私たちも役所の方々とここに向かう道中は色づく田園や山々に目を奪われっぱなしでした。
「真冬をまだ経験していないのでこれからが楽しみです」と明るく話す菊田さんには、地元の人たちからのあたたかい気遣いに支えられている様です。
「気仙沼から来た私を暖かく迎えてくれています。やはりまだ栗原の気候に慣れてないのですがいろいろ気にかけてくれます」
農家さんからは野菜やお米のおすそ分けをも多くいただき、中でもお米やズッキーニは格別に美味しいとのこと。
「この前、市の広報誌に載せていただいたのですが、歯医者さんに行ったら先生に見たよって言われて驚きました」
栗原の人の心遣い、このまちのコミュニティの高さを私たちに目を輝かせながらアピールしてくれる菊田さんでした。
「この豊富な自然を地元である気仙沼大島の方や多くの人々に知ってほしいですね。きっかけは何でも良くて、育てた木から作った加工品から林業というものをイメージしてもらったり山を感じてもらえたらいいなと思います」
インタビューの最後、菊田さんはそう素敵な笑顔で話してくれました。
(2021.9)
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