MIYAGI

INTERVIEW

先輩移住者インタビュー

掲載日:2023年11月6日
更新日:2023年11月6日

蔵王町

「誰一人取り残さない」まちづくりの理念に共感して/宇田川敬之さん

  • 古民家・空き家
  • 地域づくり・交流

宇田川敬之さん

不動産に関わる仕事をしながら、まちづくりに携わる宇田川敬之さん。自らの移住経験を生かして移住者にハードとソフトの両面を提案し、地域の人たちとの調整役も担っています。「移住ケースとして紹介いただくのにふさわしいかどうかは不安ですが」と謙遜しますが、これまでの移住者インタビューとは異なる視点から、移住検討者にとっても、迎え入れる側にとっても大いに参考になるお話を伺うことができました。

移住相談者第一号の経験を生かし、相談を受ける側に

福島県郡山市生まれで物心つく前に仙台市に移り、小学生時代は盛岡市、中高生時代は再び仙台市で過ごして、大学進学を機に上京。その後仙台に戻り、地元の大手企業に入社しました。仕事をする中でまちづくりに興味を持ち始め、「蔵王福祉の森構想」を理念にしたまちづくりが蔵王町で始まったことを知り、2016年に開設された蔵王移住相談室を訪れます。相談者の第一号でした。

相談室でまちづくりの理念を聞いた宇田川さんは、蔵王町への移住を決断。その時に対応した相談員の方が所属するNコーポレーションに入社し、現在は天然温泉付きリゾート分譲地「蔵王山水苑」などの不動産の運用や管理を行っています。自身の経験を生かして移住を考えている人の力になれればと、移住相談室で相談員も務めています。

高齢者も若者も子どもも、障がいのある人もない人も、性的マイノリティーとされる人もそうでない人も、誰もが安心して暮らせる町をつくる、「誰一人取り残さない」社会をつくるというのが、宇田川さんが共感した蔵王福祉の森構想の根底にある理念です。

その理念を基にまちづくりが進められており、蔵王山水苑の中には社会福祉法人はらから福祉会が運営する障がい者が通う学校「はらから蔵王塾」があり、特別支援学校を卒業してから活躍の場を見つけるまでの自立教育と就労移行教育を行っています。

ほかにも地域の中に特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、グループホーム、母子生活支援施設があり、セーフティーネットが整備されています。Nコーポレーションや社会福祉法人のほか、地域の銀行や企業が同じ理念の下、まちづくりを進めてきました。

土地や物件だけでなく、産業や人を資源として生かす

宇田川さんは、耕作放棄地や空き家の利活用にも取り組んでいます。現在の移住相談室も、荒れ果てた場所を自分たちで整地し、空き家を改装して設けたもの。周辺に農家レストランや足湯も整備し、人が集まる場所に変えました。

「耕作放棄地も空き家も大いなる負債ですが、つくりたいものがある人や就農移住したい人の視点から見れば、環境を整備することで資源になり得ます。負債を資源に変えるマッチングを促進して、地域を活性化することに取り組んでいます」

蔵王山水苑もその一つと言えます。首都圏の富裕層が別荘として購入し、年に数回しか利用していなかった物件が、景気の変化や世代交代を経て空き物件となっていました。それらの売買、賃貸および仲介、貸別荘としての運営を株式会社ガイアが行っており、宇田川さんがその会社の専務取締役COO(最高執行責任者)を務めています。

土地や物件だけでなく、地域の産業や文化、暮らしそのものも資源として活用しようと、2018年にはガイアが中核法人となって地元の農家や地元の法人、飲食店等と共に蔵王農泊振興協議会を設立。農泊を通した地域の活性化や課題解決、新たな産業創出による雇用拡大につなげ、2021年には農林水産省の「ディスカバー農村漁村(むら)の宝」優良事例に選定されました。

さらに2022年、民家を一つの客室に見立て地域一帯で宿泊経営を行うというイタリア発祥の分散型宿泊施設「アルベルゴ・ディフーゾ」の認証を受けます。

「貸別荘を利用された後の清掃は、主に高齢者や障がい者の方、ひとり親や性的マイノリティーの方を含めて、さまざまな事情で活躍の場がなかった方に行ってもらっています。地域社会の中で誰もが役割を持って活躍してもらうというところを評価してもらえたのだと思います」

移住者がまちづくりに参加し、それぞれの場で活躍

貸別荘の利用者を含め年間5万~6万人が蔵王町に訪れる中で、移住の相談も増え、実際に物件を購入、または賃貸して移り住む人も着実に増えています。貸別荘の宿泊者向けに提供している農業体験をきっかけに、就農移住につながった事例もあります。

移住後、多くの人がまちづくりに積極的に参加していることも蔵王町の特徴。宇田川さんは「私のようにまちづくりの理念、その具体的な取り組みに共感して移住してくる方が多いからではないでしょうか」と推察します。

軽度の知的障がいのある娘さんを持つ母親が関東から移住し、娘さんははらから蔵王塾を経てはらから福祉会の就労施設に勤め、母親は同会が運営するグループホームで寮母として働いている例もあるそうです。

なぜ、県内や東北に限らず関東からも人を引き付けるのでしょうか。その要因として、広大な自然に囲まれた環境、温泉付きの物件、仙台・山形・福島のいずれにもアクセスしやすい距離感、そこで暮らす人々といった魅力があることを挙げた上で、「やっぱり、誰も取り残さないという理念でしょうね」と宇田川さん。

「福祉はあくまで一例で、資源の循環もそうですし、さまざまなまちづくりの取り組みに興味を持っていただいているのだと思います。そして、そこに自分が活躍できる場があることが大きいのかなと」

「それが、一般的に言う町の魅力に当たるかどうかは分かりません」とも。だからこそ、移住を希望する人には、そうしたいろいろな取り組みを全て見てもらい、「この中であなたが担いたい役割、あなたが魅力に感じるところを一緒に探していきましょうというスタンスで相談に応じています」。

3つの不安を取り除くと見えてくる蔵王町の魅力

移住を検討している人の不安要素は大きく3つあると宇田川さんは指摘します。「どこに住むか」「どこで働くか」「地域に溶け込めるか」。自身も移住を前に抱いていたそれらの不安を解消するために、移住者と空き家のマッチングを行い、福祉や観光の産業を拡大して雇用を増やし、体験プログラムを通して住民と触れ合う場を提供しています。

霧が晴れて蔵王山が姿を現すように不安が解けて見えてくるのは、ハードとソフトの両面で選択肢が広い蔵王町の姿。「ハード面で言えば、タワーマンションに住みたいと言われても無理ですが、例えば温泉付きの物件、古民家、山の中のポツンと一軒家、農地のある家、そういった選択肢から選んでもらうことができます」。

ソフト面では、「誰一人取り残さない」という理念の下で行われているまちづくりの中で、活躍できる場が多種多様にあります。「観光に関する分野で活躍したければ温泉街の宿泊施設がありますし、われわれのような会社もあり、福祉の働き口もあり、農業もできます。物件を購入して宿泊施設として運用したいということであれば、それも可能です」

一言で言えば、「その方の望むものを一緒につくっていける町なのかな」と宇田川さん。「住む所、働く所、地域コミュニティーという不安要素を取り払うには、やっぱり実際に現地で、じかに肌で感じてもらうのが一番」と、お試し移住を勧めます。

窓口となる蔵王移住相談室で、宇田川さんをはじめとする相談員が来訪を待っています。「どれだけ考えても解決はしませんので、まずは一歩踏み出してほしいですね。移住相談者第一号の私が言うんだから間違いありません」と笑顔で呼びかけます。

宇田川さんの活動はこちらからもご覧いただけます。

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