MIYAGI

INTERVIEW

先輩移住者インタビュー

掲載日:2025年8月4日
更新日:2025年8月4日

丸森町

『100年先の美味しいのために』を丸森町で/新村彰人さん

  • 古民家・空き家
  • 地域づくり・交流

新村彰人さん

「このレストランのバトンを次世代にどうやって渡すかなんです」と目を輝かせるのは、ここ丸森町に移住され「古民家レストランEs(エス)」を営む新村彰人さん。『100年先の美味しいのために』をお店のテーマに掲げ、丸森町の自然豊かな環境を活かしたメニューを提供されています。



丸森町は宮城県の南端にあり、林野が町域の70%を占める緑豊かな町です。その中でも大張地区は自然に囲まれた環境が特徴で風情豊かな里山の佇まいが広がる地域です。魅力的なスポットもたくさんあり、中でも「大張沢尻棚田」は写真コンテストが開催されるほどの風景を誇り、日本棚田百選にも選ばれています。


大張沢尻棚田

新村さんは北海道のご出身。2011年に上京し都内で11年間飲食業に従事しシェフとしての実績を積みます。ビュッフェレストランのほか、イタリアンレストランやフレンチレストランで腕を振るい、2018年には中目黒のレストランのシェフを務められたご経験をお持ちです。
そこで培ってきた料理人としてのノウハウをベースにして丸森町大張地区にお店を開き、レストランのほか、食肉の流通も展開、さらに現在はファーム部門も作ろうと準備中です。そんな新村さんに、移住のきっかけや今のお仕事のやりがいなどをお聞きしてきました。



築300年の古民家との出会い

2021年に丸森町への移住を果たした新村さん。それ以前は東京都内にお店を構えようと準備をしていた時期もあったのだそうですが、丸森町を選んだ理由とそのきっかけをお聞きしました。

「東京のレストランで働いていたころから、独立しようかなと考えていました」と新村さん。上京したのは20歳の時だそうで若いうちは東京でお店を出して、最終的には地方にお店を出したいと、将来の計画を描いていた矢先にコロナ禍に直面。それがきっかけとなり東京ではなく地方でのレストラン開業を決意。地方での開業に舵をきった新村さんは、その後いろいろな地方都市を候補に挙げ検討します。



「僕の中での条件として、人里から離れていること、東京へのアクセスが悪くないこと、山があること、畑ができること、願わくば住居の敷地内に小川が流れていること。この5つが条件だったのですが、ここがぴったりだったんです!敷地の中に小川が流れてるところなんてなかなか無いですし」と、丸森町の古民家との出会いを振り返ります。



関東圏への入り口となる白石蔵王駅まで車で12分程度というアクセスの良さと、敷地内に小川が流れているという希少なロケーションが決め手となり、築300年の古民家を購入し丸森町大張地区への移住を決めます。


丸森の方たちのパッションに惹かれる

「丸森町役場の方が、お休みを返上して町内をいろいろと案内してくださって、その方がいなかったら僕はここに来ていなかったですね」それまでも移住先の視察に訪れた際には、行く先々で必ずその町の役場にはご挨拶にお伺いしていたのだそうですが、その中で丸森町の方たちのパッションが凄かったと新村さんは言います。


丸森町の人たちのパッションが凄かったという新村さん

「何より、ちゃんと人と繋げてくれたのが良かったですね。『こういう事やるんだったら、こういう人がいて、繋がっておいたほうが良いから紹介しますよ』という感じで牛の仕入れのほか流通のところまで全部繋げてくれて、補助金の紹介までしてくれて、『来るべくして来た』というご縁を感じます」と、役場の方の熱意への感謝もにじませていました。


店内を案内する新村さん。時間が止まったような心落ち着く空間でした

他にも、そのロケーションに惹かれた幾つかの地域への出店も検討していたという新村さんですが「やっぱりこの場所(丸森町)を選んで間違いはなかったです」としみじみと語ってくれました。


『生産からお皿まで』にはこの場所が最高

山深く人里はなれたこの場所だからこそのポテンシャルがあると新村さんは言います。「たとえば、人の手を離れてしまった耕作地が藪になってしまっている土地や、手を入れたら放牧地にできそうな土地などがここにはたくさんあるんです」



そのポテンシャルを活かすため、新村さんは古民家の広い敷地内で日本ミツバチでの養蜂や養鶏の準備を始めているそうです。「鶏は、今はちょうど卵から孵化させている段階で、養蜂もうまい具合に日本ミツバチが入ってくれまして」と眼を細めていました。


窓の外に広がる広い敷地を説明する新村さん

また、古民家の前の道を挟んだ向こう側の土地も敷地だそうで「あそこを放牧地にしたいと考えています。お客様には牛を眺めながら食事をしていただきたいですね」と牛の放牧の計画も進めているとのこと。その農法も「耕作放棄地を利用するんです。小さい面積の中で牛たちに野芝を食べさせて飼育しながら、次の場所へと移動させていくんです」と具体的に説明してくれました。



今後はレストランを通し「この場所を動物たちと共に変化させていきたい」と考えているそうで、「牛たちにも牛舎の中で飼料を食べさせるのではなく、外で野芝を食べさせたい」と、動物たち本来の生態を重視したレストラン業を展開させたいと語ってくれました。「『生産からお皿まで』を一貫してやるにはこの場所は最高ですね」と笑顔で語ってくれました。


丸森だからこその着想「熟成と発酵」

新村さんが提供するメニューの中心となるのが「自家製の熟成肉」。素材となるお肉はお店から仕入れるのではなく、牛や豚を1頭買いで仕入れます。新村さん曰く「熟成肉はオーダースーツと同じで、お客様のお好みに合わせた熟成具合に仕上げています」という逸品。
レストランで調理しメニューとして提供するほか、都内などの飲食店から依頼を請けてオーダーメードしています。



丸森町に来てお店を開いた当初から熟成肉を手がけ提供していたものの、その頃はまだ他の食材を使用したメニューが中心だったという新村さん。
「お店を開いた頃、ある日お客さんに『意外にお料理が都会的ですね』と言われまして、凄いショックを受けました、それは『言われないように気をつけよう』と常に意識していた言葉だったんです」と、料理人としてのスタイルを見つめ直すきっかけになった一言があったことを明かしてくれました。このことが、ご自身がこれまで培ってきたスキルやノウハウをいったん頭の中で除外し、何で勝負するかを考える良い機会になったと新村さんはいいます。その結果たどり着いたのが熟成や発酵に軸足を置いた「食の提供」という考え方だったのだそうです。


お客様からの意外な一言にショックを受けたという新村さん

「なぜ、昔の人たちは発酵させたり熟成させたりするのかというと、四季に関係するんですよね、夏の間に収穫して冬に備える『保管』という考え方というか、生き物たちもみんなそうですよね」と、ここ丸森町に来て良い意味での「何も無さ」を実感することで、熟成肉の考え方がご自身の中で変わったという新村さん。「採れたてのフレッシュさとは違いますが、保管して熟成させないと出来ない時間が織りなす味わいは、同じものは一つと無いですから真似出来ないですよね、最終的にそこに落ち着きました」

また、「たとえば、”クロモジ”という高級爪楊枝に加工されるとても香りが良い樹木があるのですが、こういうのがちょっと山の中に入っていくと、いっぱい有るんです。『目の前にあるじゃん!』って気が付きまして、今、そういったものを勉強中です!」と、この場所ならではの自然環境にも瞳を輝かせます。



まだまだ第一章

今後の展望についてお聞きすると「やりたいことがいっぱいあり過ぎて(笑)」という新村さんは、首都圏などから来られるお客さんや業者の方を、地元の繁殖農家さんや耕作地に案内することもあるそうです。「僕は丸森が大好きなので、都会から来る人に案内するんです、そうすると牛の息遣いや大地の匂いに触れることができて『牛ってこんなに大きかったんだ!』って凄く喜んでくれるんですよ」と嬉しそう。



新村さんは、「ここなら牛が放たれていて、家畜がいることで土地は耕されるし、その風景自体が観光資源にもなるし一石二鳥だと思うんです。でもそれは特別なことをするんじゃなくて、この土地の特徴を活かし家畜や生き物と一緒に生きていくという考え方なんです。それをここで僕がやりたいんです」と今後のビジョンも明確です。



丸森町ではなく、あえて「丸森の大張地区」と言い切って、この町の魅力を発信し続けている新村さんは「最終的に、同じことをやりたいと思う人が増えてくれたら嬉しい」といいます。そのためには、まだやる事は沢山あるそうで「まだまだ第一章ですね」と、窓の外に眼をやりながらしみじみ語ってくれました。






梅雨の真っ最中ということもあり、本降りの雨の中お邪魔した「古民家レストランEs」。
この雨すらも風情にしてしまうほどの古民家の佇まいと、新村さんのお話に惹かれ、つい時間経過を忘れてしまうひと時でした。



築300年を誇る古民家の改修作業は、約半年を費やしてほぼお一人でやり遂げたという新村さん。
そのお姿からは揺るぎない信念と風格がにじみ出ていて、まさに古民家と一心同体。心地よい余韻の残る取材となりました。


新村さんと「レストランEs」の情報はこちらからもご覧いただけます▼

レストランEsオフィシャルホームページ
https://es-leo.co.jp/

インスタグラム
https://www.instagram.com/es.miyagi/

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