MIYAGI

INTERVIEW

先輩移住者インタビュー

掲載日:2026年1月26日
更新日:2026年1月26日

栗原市

関西から移住し栗原の”蔵人”に/栗原市 望月清美さん

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望月清美さん

「宮城は”たこ焼き”屋さんがほんまに少ないんですね!関西だと電車の各駅ごとにある感じでしたよ(笑)」と、陽気に話し始めてくれたのは、栗原市高清水の酒造会社「はさまや酒造店」でお酒造りに従事する望月清美さんです。


望月さんと奥様の祥子(さちこ)さん

奈良県で生まれ兵庫県で育ったという望月さんは、奥様と共に栗原市に移住され酒蔵の運営に励みながら二児の子育てにも奮闘中。移住6年目を迎えます。
江戸時代中期から続く老舗酒造店「はさまや酒造店」にお邪魔して、その伝統を継承するべく「杜氏」(とうじ 酒造りの製造責任者)としての重責も担う望月さんにお話しを伺いました。


”杜氏復活”のために必要だった「信頼できて腕の利く人材」

望月さんは大学卒業後、広告代理店に就職しましたが、お酒の造り手へと転身し三重県や大阪府にある酒造会社に勤務し腕を磨きます。その頃から、自身の持つ「酒造りへの考え方を聞いて受け入れてくれそうな酒造会社があれば…」という想いを心にしたためていたという望月さんは「三重県の酒蔵で8年間勤め、その次に大阪の酒蔵に転職したんですが、その時にはさまや酒造店の話が来ました」と、移住の経緯を振り返ります。



望月さんによると、はさまや酒造店は宮城県沖地震(昭和53年)の際に大きな被害を受け、やむなく酒蔵を取り壊したそうで、それを境にお酒を製造委託に切り替えたとのこと。



長年続いたその状況から、立て直しに動いた社長が”お酒造りのネットワーク”を介し、有望な杜氏を探したところ、望月さんの存在が浮上したとのこと。「蔵人としての経験も積んでいて、お酒造り以外の経営的なことも出来る人材をうちの社長が探していたと聞いています。それで僕を押してくれた方がいたそうです」望月さんが語る社長とは、はさまや酒造店の経営者であり、シンガーソングライターとしてもご活躍されている”かの香織”さんです。
その社長が酒蔵復活を図り迎え入れたのが望月さんでした。



一方、その当時勤務していた酒造会社からの転職を模索していたという望月さんは、他の酒造会社からも声を掛けられていたそうで、当時の胸中をこう語ります。「この業界にいて、しっかりと経験を積んでいけば、最終的には製造責任者(杜氏)になることは出来ると思うのですが、自分の考えるお酒造りができるかというと、それはなかなか難しいと思うんです」
そんな中、杜氏も不在でこれから立て直しを図るという老舗酒造会社が宮城県にあるという話が望月さんのもとに届きます。「これはチャンスだと思いましたね!こんな席はなかなか空かないですから」と、当時の心境を回想しながら、移住のきっかけと、はさまや酒造店を選んだ理由を教えてくれました。


何も無いからこそ魅力的だった

「萩野酒造さんに製造委託していたので、製造設備がゼロでしたが、今後はここにも設備を備えて製造していくという社長の考えを聞いて、やるからには何も無いところのほうがいいなと思ったんです!」と当時の事情も教えてくれました。
杜氏として製造を任せられつつ、立て直しを担う重責に心が奮い立った望月さんは、このときにはさまや酒造店の杜氏になるイメージが鮮明になったといいます。



43年ぶりの復活「桂泉REVIVE(リバイブ)」

2020年、栗原市に移住を果たし長い歴史を持つ酒蔵の杜氏の席に着いた望月さんは、はさまや酒造店のルーツ銘柄「桂泉」のシリーズ化に着手します。
「もう一回ここでお酒を製造できるようになったら『桂泉』銘柄にしようと社長と話していたんです」と言いながら冷蔵ケースから持ってきたのは「桂泉」の純米大吟醸酒。


『桂泉REVIVE 純米大吟醸酒』

「桂泉」は古くから製造されて来たはさまや酒造店が誇る伝統銘柄ですが、近年では「こんこん」や「阿佐緒」銘柄のほうがお馴染みになっているそうです。
望月さんは「うちのお酒は僕が来たときは100%萩野酒造さんで製造していました。社長と相談して、それ以降にここで製造したものを『桂泉REVIVE(リバイブ)』と命名しようということになりました、復活43年です!」と力を込めます。



もともとは単独銘柄で1種類のみだった「桂泉」の品種を増やし、現在では「吟のいろは」や「うすにごり」など新たな銘柄を”REVIVEシリーズ”と銘打って製造し提供しています。
「これは完全にここで造ったお酒なんです!」と語りながら手にした「桂泉」に嬉しそうに眼を落とす望月さん。その表情からは蔵人としての意気込みがしっかりと伝わってきました。



伝統を守りつつも新しいお酒も提案していきたい

望月さんは「宮城のお酒はすっきりしていて、やや甘め。そして香りが良い傾向ですね。関西系のお酒はしっかりした味わいで、ちょっとクセがあるかも知れませんね」と、造り手ならではの切り口で、解りやすく宮城県のお酒と、故郷である関西のお酒の違いを教えてくれます。



また「東北地方の食べ物は塩分濃度が高めなので、淡泊ですっきりしたお酒が多い傾向ですね」としたうえで、地元産(栗原市)の野菜の旨味の濃さにも言及。
「ここは地域柄、野菜料理が多いのですが、ここの野菜は肉や魚よりも味が濃くて美味しいと僕は思っていて、そういうのに合わせるお酒は、逆にしっかりした味わいのものが良いと思うんです」と、これまでの知見に基づく独自の分析と、ご自身のお酒造りへの考え方も語ってくれました。



「言い方を変えれば『宮城すぎないお酒』にしようと考えています!」と、意気込む望月さんは、伝統を守りつつも、新たな視点も取り入れた繊細なお酒造りを心掛け、忙しくも充実した毎日を送っています。


蔵人として、父として

とはいえ、お酒の製造販売と二児の子育の両立は簡単ではない様です。
「こっちに来てからは、妻とパートさんの三人でやっていますが、メインで動くのは僕なので、自分が倒れちゃ本末転倒ですからね、休みはしっかり取ろうと思っています」という望月さんですが、移住前はそうではなかったそうで「タンクで発酵が始まったら、お酒は微生物だからずっと動いているんです。だから休み無しですね。造り始めたら誰かが絶対に蔵に居るという。そういうのが当たり前で、そういう酒造会社が多いと思いますよ」と、お酒造りの一般的な労働環境も教えてくれました。



また望月さんは、休みの日を作らないことで、二人のお子様にストレスを及ぼすことをもっとも危惧しており「休まないと結局は良い仕事ができないし、それに子供のストレスも溜まりますし、それだったら休んだほうがいいですから」と、これまで培ってきた経験を活かし、お酒造りの下準備や発酵計画などに綿密な工夫を施すことで、休みの日を設けられるようにしているのだそうです。



また、「お酒を搾るとき、僕一人ではできないから、妻とパートの熊谷さん、あと近所の人にも手伝ってもらうんですよ」と、お酒造りの最終工程である「搾り」についての心温まるお話しも。
「うちにはプレス機が無いので、酒袋っていう木綿の袋に”もろみ”を入れてぽたぽた垂れるやつを集めるんですけど、そこからキュッと搾って、みんなで『ああ、出てきた!』みたいな、あの瞬間が凄く良いんですよ!」と、少数精鋭だからこそ味わえるお酒造りの醍醐味を身振り手振りで表現してくれました。


妻と二人三脚の毎日

「お店を開けない火曜日と木曜日は主に出荷作業で、私は経理関係をやっていますが、納品書や送り状など、結構いっぱいいっぱいですね(笑)」と、笑顔で話すのは大阪府ご出身の奥様、祥子さん。



「主人は、付き合っている頃から日本酒が大好きなのを知っていたので、結婚したら大阪を出たとしても新潟あたりかな?と思っていましたが、まさか宮城県だとは思っていませんでしたね(笑)でも、私も美味しいお酒が飲めるし良いかっていう感じでしたね(笑)」と、気さくに話す祥子さんも家族で挑む新天地での移住生活に協力的だったようです。



栗原市の印象をお聞きすると「大阪から三重県を経て来ているので、そんなに遠くに来た印象はないんですが、実家の大阪に帰省するときは子供たちも楽しみにしていて、完全に旅行気分ですね。そのときに『ああ遠いんだな』って実感しますね」と、笑顔で語る祥子さん。

「私が一番好きなのは『桂泉 こんこん 秋あがり特別純米酒』ですね。さっぱりして美味しいです、ぬる燗で」と、お気に入りのお酒を紹介してくれた祥子さんもお酒が大好きだそうで「いつもキッチンで飲みますね。冷やしてるんですけども、飲もうとすると子供たちに呼ばれちゃってすぐに飲めなくて、戻ってきたら常温になってます(笑)」と、ご多忙ながらもほのぼのとした日常の一コマも教えてくれました。


すっきりとした味わいが特徴の『桂泉 こんこん 秋あがり特別純米酒』秋限定だそうです

そんなお話しをしていると「あ、そろそろ下の子の幼稚園バスが着くので(笑)」と、お迎えの裏口に小走りする祥子さん。そこにはタイミングを図ったようにバスから元気に飛び降りてきたお子さん(3歳)がいました。


幼稚園バスから降りるなり、私たちにお父さんのお仕事場をいろいろ教えてくれました

力を入れていきたい「オーガニック日本酒」

はさまや酒造店が宮城県内で初めて取得したという「オーガニック日本酒」の認証制度についてお聞きしました。望月さんによると、この認証制度は、有機米やオーガニック米などの原料を使い造られたお酒について「オーガニック」と名乗り販売できるというものだそうで「一迫で有機米を作られている門傅醸造さんから「有機ササニシキ」を分けてもらって造ったのがこの『阿佐緒オーガニック』です」とのこと。


有機ササニシキから醸造した『阿佐緒オーガニック』

通常の日本酒は精米歩合が50%~60%のところを、90%という一般的な食米と同様の精米歩合(削りが浅い)のお米から製造されたお酒とのことで「どう表現して良いのか解からないくらいゴツいお酒が出来たんです。僕としては結構良いなと思っているんです」と望月さん。今後もオーガニック日本酒を作っていきながら、この延長で「あまり削らない」お酒造りにも力を入れていきたいそうです。


少数しか製造しなかったという希少銘柄

気になった「阿佐緒」の名前の意味をたずねると、はさまや酒造店の家系が、大正・昭和の時代に活躍された大和町宮床出身の女流歌人『原阿佐緒さん』と血縁関係にあったのが由縁だそうです。



これから、そして栗原の町に思うこと

望月さんは、かつて酒蔵を構えていたという裏庭を見せてくれながら、これからの展望を話してくれました。
「今後はここの敷地に酒蔵、麹蔵、倉庫を作る計画です。それと、社長は宿泊施設も作りたいとおっしゃっていて、『泊まれる酒蔵』ということで。観光客の呼び込みも考えているんです!」と今後のビジョンも明確です。



また、望月さんが暮らす栗原市高清水について、予想していた以上に高齢化率が高いと感じているそうで「皆さん、日中はどう過ごされているのか気になっていて、この場所(店舗)が、お年寄りから子供まで、誰でも気軽に立ち寄れる場所に出来たらなって考えたりしています」お店の前を通る町の人に眼をやりながらそう話す望月さん。



今はまだそこまで手が回らないとしながらも「いずれは、みんなが気軽にお茶を飲みに寄ってくれる。そんな居場所にしていきたいです」と頷くように話してくれました。


冬の伊豆沼、朝日と渡り鳥たち

休日は、伊豆沼や栗駒山に良く足を運ぶそうで「これからの季節だと、伊豆沼に行って白鳥の観察とかですね、子供が好きなので」という望月さんは、栗原市の夏は涼しく、四季を感じやすいところが気に入っているそうです。

最後に「僕の場合、移住は”結果論”でもあったのですが、今はやっぱりここに来て良かったと思っています」こう言ってインタビューを締めくくってくれた望月さんでした。




望月さんの語るお酒にまつわるお話しにすっかり感化されてしまったスタッフ一同。ついお話しに引き込まれ、時間を忘れてしまうインタビューになりました。

はさまや酒造店の詳しい情報はこちらからご覧ください
https://hasamaya.stores.jp/

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