夫婦の共通の趣味、登山とアウトドアの店をオープン

宮城県の北西、栗駒山の麓に位置する栗原市栗駒地区。六日町商店街は城下町として栄えた藩政時代以前からの町の中心です。今は少々空き店舗が目立ちますが、以前スーパーマーケットだった建物の２階に、蘇武和祥さんと奥様の優子さんが営む「ourthing（アワーシング）山と暮らしの道具店」があります。オープンは２０１７年９月。登山やアウトドア用品のほか、コットンやリネンの小物、食品や雑貨も並びます。日本で数軒しか扱いのないレアなアウトドアメーカーの商品や、オリジナルシェラカップ、自分の育てたお米などこだわりの商品も。店には登山だけでなく、渓流釣りや山菜取りに行く人、山のガイドや山岳救助隊の人も訪れます。

「子どもの頃から慣れ親しんだ栗駒山の魅力を伝えたいので、ここは、店の個性をより表現できる。自然に近い地方こそ、こういう店があるべきだと改めて思いました。山好きの情報交換ができる場になればと考えていましたが、地元の人もクマよけ・防虫スプレーや、ちょっとしたプレゼントに小物を買ってくれたりしています」と和祥さん。登山が趣味の2人の経験から、ある程度の需要は予想していたと話します。

代々続く田んぼを継ぐこと、商店街ににぎわいを生むこと

2人は２０１７年に仙台から栗原市に移住しました。和祥さんは、もともと栗原市の出身で、実家は６代続く兼業農家。地元の高校を出て仙台の専門学校で服飾ビジネスを学び、その後は仙台のファッションメーカーやショップで商品企画や生産管理、グラフィックデザイン、販売などを経験。アウトドアファッションや道具も扱うショップの勤務がきっかけで、もともと好きだった登山やアウトドアの魅力にはまり、同じ趣味の仲間を通じて優子さんとの出会いがありました。

仙台市出身の優子さんは、２０代で上京、東京のスポーツショップでの勤務をきっかけに登山が趣味に。東京では仕事も趣味も楽しんでいましたが、東日本大震災を経験して、仙台の両親の近くにいたいと帰郷しました。和祥さんとは８月１１日の「山の日」に入籍したという山を愛するご夫婦です。

店をはじめるなら、これまでの仕事の人とのつながりがあるうちに始めたいと思い、そして、自分たちが店を開いて人を呼ぶことが、栗原のためになると思い、「ourthing（アワーシング）山と暮らしの道具店」を開くことを決めました。和祥さんの子どもの頃の商店街は、週末やお祭りの時はとても賑やかでした。お店があることで、栗駒山を好きな人が集まる場にできれば、少しでも商店街に賑わいが戻ってくるかもしれないと思っているからです。

同じ商店街に古民家を改装したカフェ「かいめんこや」さんがあります。「私達も地方の山に登った帰りは、麓の街のカフェやアウトドアショップに立ち寄って観光することが多く、それも楽しみの一つだったんです。」と和祥さん。栗駒山に来る登山客にも同じ様に楽しんでもらえるように、商店街に店を開くうえで「かいめんこや」さんが近くにあるというのは重要なことでした。

「かいめんこや」の杉浦風ノ介さんに、いろいろな意味で背中を押してもらったといいます。小さい店をしたい人が商店街に空き店舗を見つけても、不動産屋が入っていないことが多く、アプローチが分からない場合が多いそう。「僕たちの場合は、親戚も商店街におり、物件はかいめんこやさんに紹介してもらいました。今後は自分たちもつなぎ役として手助けすることで、若い人や店をしたい人の移住を増やしたい」と和祥さんは考えています。

山の近くの心地よい暮らしぶりを発信

晴れていれば栗駒山を望める町で、田んぼの草刈りをしてから、店に出勤するなど、すっかり早寝早起きになったと和祥さん。好きなことを仕事にしているせいか、稲の成長とともに季節を感じる気持ちのいい生活のせいかストレスはないそう。朝日や夕日など、子どものころは何とも思わなかった当たり前の景色に癒されています。

和祥さんの移住の決断を快く受け止めた優子さんも、久しぶりの車の運転に慣れると不便はまったく感じないとか。義母が作る無農薬の新鮮野菜の甘味と水のおいしさは何より贅沢な気持ちで、「毎晩ご飯がおいしくて多少太ったけど（笑い）、肌つやが良くなったと自分でも思うんです」とほほ笑みます。

山に登ったりキャンプしたり。自分たちの大好きな栗駒山や栗原の暮らしぶりをもっとブログやSNSで世界中に発信していくことで、いろいろな人とつながり、訪れる人を増やしたいと考えています。

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