MIYAGI

INTERVIEW

先輩移住者インタビュー

掲載日:2019年12月12日
更新日:2023年2月21日

加美町

食品メーカーからの転身。新米ファーマー奮闘中! /大友裕貴さん

  • 地域おこし協力隊
  • 農林水産業

大友裕貴さん

「野菜って、おいしいものだったのか!」の衝撃

鳴瀬川河川敷に広がる農地の一角にある「大友農園」。かわいらしいニンジンの葉っぱが行儀よく整列し、青空に映えています。この春就農したばかりの大友裕貴さんは、数ヵ所ある農地で多品目の野菜の無農薬・無化学肥料栽培に挑戦しています。

宮城県大和町出身の大友さん。子どもの頃から食に興味があり、仙台にある大学を卒業後、大手食品メーカーに就職、営業マンとして活躍します。「でもだんだん、これは違うと思い始めました」。と話します。その理由は、作る人と売る人の間の距離。原材料をどこで誰が作っているのか知らないことや、商品の作り方も分からずに売ることに違和感をおぼえ、納得のいく仕事を大友さんは探し始めました。

ちょうどその頃、ある店で食べたニンジンのローストに衝撃を受けたそう。「なんだこれ!って思いました」。その味を脳内で再現したかのようにニコニコしながら、「付け合わせのニンジンがおいしすぎて、メインの肉の味を覚えていない」と笑います。それまで野菜は「健康のために」食べるものだと思い込んでいたという大友さん。「こんなにおいしいものを自分で作って自分で売れたら、カッコイイじゃないか」。それが、農業への転身のきっかけになりました。

3年後を夢見て「俺の野菜作り」模索中

農業をやると決めたものの、知り合いもなくどうしていいか分からないままネットをサーフィン。そこで「地域おこし協力隊」を知ったそう。宮城県内にいくつも募集はありましたが、子ども時代に遊びに行ったことのある加美町に目が留まり応募。2016年から3年間活動しました。
活動は、法人格を持つ農家での研修と農作業。草刈り機の使い方も知らなかった大友さんは、ここで農業の基礎や農機具の扱いを学び、地元の人とのつながりを築きました。心を打たれたのは、冬の大雪や夏のイノシシ被害などに苦労しても、明るく笑い飛ばして乗り切る人々の粘り強さ。加美町で出会う人がみんないい人で、ここで農業をしたいと思い、2019年春、農地を借り、農機具を購入。5年間放置されていた農地の草を刈り、掘り起こすことから大友農園がスタートしました。

大友さんには試してみたい農法がありました。ほぼ独学で学んだ、もみがらやおがくずを活用した土づくりです。でも周囲に手掛ける人はおらず、ほとんどの人が「うまくいかないから」と止めたそう。「皆さん農業の苦労を知っているから、聞いたことのない方法でやろうとする僕を心配してくれました。でも、どうしてもやってみたくて」。穏やかな表情と言葉遣いの奥に秘めた、意志の強さ。「最初の3年はなかなか取れないが、軌道に乗れば収量が増えて病気もつきにくいと言われています。とにかく3年必死で頑張って、結果を出したい」。強く言い切るときも、大友さんはどういうわけか、スイーツの話でもしているかような優しく人懐っこい笑顔なのです。この人柄に、地域の人たちは協力したくなるのかなと感じてしまいます。

実際、一人で農業を始めた若者がいると知れ渡り、地域の人がかわるがわる世話を焼いたり機械を貸してくれたり、困っていれば相談に乗ったりしてくれるそう。「自分が知らない人も、声をかけてくれたりします。僕は要領が悪くて一日中、畑にいるから」と笑いながら、「すごくありがたい。加美町に来てよかったです」としみじみ。

初めての夏の成果はどうだったのでしょう。「一応、販売にこぎつけました」と照れ笑い。「他の農家さんでバイトさせてもらいながら、やっと生活できる程度ですけど。でもそれは分かっていたことだから」。
販売先は飲食店や個人。青い軽トラックで運び、手渡しで販売します。価格設定が難しいと苦笑しながら、「利益は出さないといけないけれど、『毎日食べられる価格』を考えてつけています」。

飲食店への飛び込み営業も仕事のうちですが、そこは元・営業マンの腕が鳴るところ。「使ってもらいたいお店を探して、話を聞いてもらえそうな時間帯を狙ってアタックします」。主な得意先は町内や大崎市古川。「それまでトマト缶を使っていたお店が、うちの加熱用トマトに変えたら明らかに味が違う、酸味の後からすごくうま味が出てくると言ってくれました」と大友さんは笑顔をほころばせます。

農家と調理人のコラボで町の食文化を醸成したい

農業の魅力を尋ねると、「毎年変わる気候に対応して作物を作ったり、失敗を次シーズンにどう生かすか考えたりするのが、難しくてすごく面白い」。栽培するのは30品目、80~90種類も!近くに植える作物の組み合わせによって害虫を減らす効果や、多品目作ることでリスク回避するなど、無農薬の難しさを乗り切ろうと工夫を凝らします。
目標は、農業一本で生きていくこと。やりたい農業は見えている、でもこの方法で完全に独り立ちできるかどうかは未知数です。「3年で、形にしたい」そう何度も、大友さんは話します。

自分がおいしい野菜をたくさん作ったら、地元の飲食店にたくさん使ってもらいたい。もっと勉強して野菜のことを深く知り、料理人に伝えられる知識を蓄えたい。プロが作った野菜を、最高の状態でプロの料理人が調理すればどんなにおいしくなるだろう、加美町をそんな店でいっぱいにしたい…。大友さんの夢は膨らみます。

ところで大友さんにはもう一枚、名刺があります。加美町地域おこし協力隊のOBとOGで作る団体「プラビラボ」のもので、現在のメンバーは大友さんを含む6人。若手のフットワークを生かして雪かきや草刈り、農作業を請け負う事業を行うほか、農業体験を盛り込んだツアーやイベントの企画・運営を行うそう。新しく吹く風と、昔ながらの良さを融合させながら元気な町を作っていくエネルギーが、加美町にはふつふつと湧いているようです。

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